れいじのなかのれいじ

神威怜司のbookメモ&思考メモです。

1つの物事を様々な視点から見る重要性 -【本】「原発のウソ」 小出 裕章

これまで原子力発電に関する肯定的な内容の本を読んできたので、いわゆる「反原発」の本を読んだ。

読んだ感想としては、同じデータでも意味づけが全く違うこと。例えば、LNT(Linear Non-Threshold)モデルおいて、著者は100mSv以下の被曝でも放射能は危険であるという。一方、池田信夫さんや藤沢数希さんは100mSv以下の被曝では健康被害はよくわかっていない、という主張をとっている。このLNTモデルは専門家の間でも様々な考え方があるため、どの専門家の意見を拾ってくるかで、LNTモデルに対する主張が異なる。

これがまさに苫米地秀人さんがいう、ストコーマではないだろうか。同じデータでも自分の主張にあった見方、主張に目がいってしまう。これはもちろんぼく自身もそうである。ぼくは原子力容認派なので、原子力に肯定的な意見に目がいくし、意図的に情報を集めにいく。

だからこそ、ある物事に対する考えは自分で選ぶしかない。多くの場合、必ず自分の主張とは反対の主張がある。そのときに今まで通りの主張を選ぶか、新たな主張を選ぶかは自分で決めるしかないのだ。もはやどちらが正しいというのはなく、自分の中では自分で選んだものが正しいのだ。なので、偏った情報ではなく、幅広い情報を手に入れることが重要だなと思った。今回、原子力発電について、複数の視点から見ることができたは自分の中でいい収穫になった。

 

原子力発電はCO2の排出が少ないといわれているが、それは発電時で比べたのみで、ウラン鉱石から燃料ペレットにするまでに多くのCO2を排出しているようだ。しかし、具体的な数値では示されていなかったので、どの程度の排出量なのかはわからなかった。今後、機会があれば調べてみたいと思う。

 

また、著者は原子力発電の発電コストは高いといっており、実際にデータでも示されていた。しかし実際のところは原子力を止め、その分の電力を火力発電で補うことにした現在では電気料金の値上げが起こっている。ということは、原子力の発電コストはやはり安いのではないかと思ってしまう。

もしくは「化石燃料を追加調達するのだから、電気料金の値上げは確実」という主張に電力会社が便乗したのかもしれない。だが、ぼくはやはり電気料金の値上げは、石油価格は上下しているものの上昇の傾向に見れるので、前者が要因であると考えている。

 

ぼくは一度使ってしまった便利な技術はなかなか手放せないと思っている。確かに原子力は危険な面もあるが、過去60年ほど運転を行ってきて、人命で考えたリスク分析の結果は極めて低い。むしろ自動車事故や火力発電による大気汚染の方が深刻である。なので原子力の重箱の隅をつつくよりは、今回の事故の問題点からより安全な技術を確立していけばいいのではないかと思う。