れいじのなかのれいじ

神威怜司のbookメモ&思考メモです。

行間によって書かれた1冊 -【本】「大不況には本を読む」 橋本 治

本書を読み終わった後に思ったこと、もう1度読み返そう!

 

 

題名に直に関係するところは最後の約30ページほど。あとはその30ページのための伏線である。しかし、この伏線があるからこそ、最後の30ページがすーっと入ってくる。

 

本書の前半、と言うかほとんどは、今日までの世界の経済情勢について、著者が思うことを書き連ねたものである。この部分、著者が「自分で考えたこと」を書いている。

 

本書の中に出てくる、リーマンショックや日本のバブルのような出来事は、ネットで誰でも手に入る情報であるが、その間をつなげる言葉は著者のオリジナルである。

著者が考えた経済情勢の解釈は「あっている」、「まちがっている」が重要なのではなく、1つの主張を最後まで書いたことに大きな価値がある。本書に書いてある解釈は著者にしかできないのだから。そしてその著者の勝手な解釈を読むことに価値があり、そこで生まれる著者との対話が重要である。この対話により、著者の考えを基礎にして、自分の考えを考えることができる。

家は建ててもらって、その家にどのようなインテリアを置くか、考えるような感覚だ。

 

そして著者はこの「自分で考えること」が重要だと、とく。

著者の言葉を借りると、「書かれていない行間を読む」ということになる。

これは私の解釈であるが、これは行間の間を次はあなたの言葉でつなげましょう、ということではないだろうか?

行間を自分の勝手な考えで埋めてみよう、と著者は言っているように聞こえる。そしてその考えは、あっていようが、まちがっていようが関係ないのだ。そもそも正解などないのだから。

 

「考えたこと」に意味があり、その「考えたこと」がいつの日にか世界をよりよい方向にもっていく、1つのピースになるのではないだろうか。

 

著者は経済史の行間を読むことで、新書1冊を書いてしまうのだから。ほんと自由でいいのだ。