心にじわじわと染み渡る数々のエッセイ -「村上ラヂオ3」 村上春樹ー
やることに追われた日々がひと段落して、たまたま手に取って読み始めた一冊。
ここ1か月はまともに本が読めなかった。
「時間がない」というのは、僕は好きではないので極力言わないようにしているが、ここ一か月の間には何度か無意識の内に口に出してしまっているのではないだろうか。僕は「時間がない」とか、「忙しい」という言葉は使わず、「やることが多い」と言うことにしている。どれも同じじゃないか!、と言われたら、「そうね。」としか言えないが、僕の中では「忙しい」と「やることが多い」では、大きなニュアンスの違いがあるのだ。「忙しい」というのは、自分の限界を決めてしまっている言葉のようで、僕は好きじゃない。
そんな「やることが多かった」日々がひと段落した際に読んだ。村上春樹氏の著作は好きでよく読む。本書も書店で見つけて購入以来、半年以上、読まずに温めていた本だ。
本というのは不思議で、自分にとって必要な時に必要な本を手にとる、セレンディピティがある。本書は僕にとってのセレンディピティだった本だ。少し、いや、だいぶ疲れていた心に、村上春樹さんの文章がじわじわと染み渡った。これが村上春樹さんの小説だったら、このような気持ちにはならなかっただろう。エッセイだったからよかったのだ。
村上春樹さんのエッセイは日常の何気ない事に焦点を当てて、その何気ない事を村上春樹さんの言葉で掘り下げて語ってくれるのがいい。その文章を読んでいて、ほっこりとして、安心した気持ちになれる。
「昼寝の達人」が僕の中ではよかった。
ある文章に惹かれたというよりは、このエッセイ全体の雰囲気がよかった。やることが多いと気持ちに余裕がなくなって、ネガティブな感情が多くこみ上げてくるのだが、そんなネガティブな感情を抑えてくれる文章だった。
昼寝をしてリフレッシュすればいいのだ。
ネガティブな時は昼寝をしようぜ。
と、僕に優しく諭してくれた。
僕がこのエッセイを読んだのは夜だったので、さすがに昼寝はしなかったが、昼寝をしたような効果をもたらしてくれた。気持ちが楽になった。
そもそも昼寝ではなく、夕寝か、、、
また「コップに半分」のエッセイでは元気づけられた文章があった。
村上春樹さんは長編小説に取り掛かるときに以下の気持ちを確信を持って臨むそうだ。
「よし、これは絶対に完成できる」
僕は文章を書くときに自分の文章に自信がなく、ついつい、筆が止まってしまうことがある。
でもそれではダメで、とにかく、自分に自信をもって、その自信に根拠のない確信を持って、文章を書いていこう、と激励を貰った。
「僕にはこの文章は絶対に完成できる」
いやー、やっぱり本はいい。本がなかったら確実に僕の人生は破綻をきたしている。
とにかく、この本から元気をもらったので、また仕事を進めてしまう。
あなたもきっと、本書に収められているエッセイのどれかには心の琴線が触れるはずです。ぜひ読んで、心を少しでも落ち着かせてください。