れいじのなかのれいじ

神威怜司のbookメモ&思考メモです。

原子力について詳しくなった -【本】「日本の原発技術が世界を変える」 豊田 有恒

本書を読んで、日本の原子力の技術は高いということを改めて思った。そして、原子力、放射線に関する正しい知識があれば、過剰な不安を抱える必要はないと。

2011年の東日本大震災福島第一原発の事故、2007年の新潟中越沖地震柏崎原発の停止。これらの自然災害にあっても、原子力発電による死者はほとんど、むしろ一人もでていないのではないか。(福島原発の事故で今後、死者がでる可能性もあるが)

これらの事故が他の国で起こったとするとぞっとするのは、私だけではないだろう。今のような現状じゃすまなかったと思う。地震があった後、原子炉は安全装置がきちんと働き、制御棒が挿入され、核分裂の連鎖反応は停止した。暴走しなかったのはすごいことだ。

確かに、福島事故の背景にはヒューマンエラーがあったのは否めないが、それは今後、改善策がだされ、安全がより徹底されていくだろう。科学の進歩(安全性)はこのような事故によって、より安全になっていくのだ。皮肉な話だが、人間は失敗からしか学べないのだろうか...。

 

本書を読み進めていくと、私がいかに日本の原子力研究の歴史を知らなかったかがわかった。

日本の原子力、航空がアメリカよりも劣っていた(特に航空)のは、敗戦国であったことが理由とは知らなかった。戦後の10年はアメリカによって、原子力の研究はさせてもらえなかった。理化学研究所仁科芳雄博士が設置したサイクロトロンが終戦後、アメリカ軍によって東京湾に投げ込まれたという話には驚いた。戦後の10年がなかったら、日本は原子力に関してより多くの貢献をしていたのではないか。

戦後の原子力に関しての技術の遅れを日本が取り戻せたのは、アメリカがスリーマイル原子力発電所の事故以降に、製造等をやめてしまったからだ。ここで、アメリカが原子力を推進し続けていれば、日本が原子力に関して、ここまでの地位を築けなかったかもしれない。

アジアでの原子力の先駆者はインドだ。インドでは1956年にアジア最初の原子炉<アプサラ>(ヒンドゥー語で天使の意)を運転させた。原子炉の研究だけでなく、日本では近年になってやっと再処理工場が稼働したが、インドでは1964年には稼働している。いやー、インドの原子力レベルも高いんだなと。

 

本書は福島原発事故以前に書かれた本であり、ぜひ、著者、豊田有恒さんには福島事故以降の現在の状況を考慮して、もう一冊新たに書いてもらいと願う。私にとっては各国の原子力事情と歴史について、非常にわかりやすかった。