れいじのなかのれいじ

神威怜司のbookメモ&思考メモです。

タイムマシンに乗って、今の未来の素晴らしさを体感しよう -【本】「繁栄」(上)、(下) マット・リドレー

まるで本書はタイムマシンである。

なぜなら、人類の歴史をわずか数時間で体験できてしまうのだから。

 

 

下巻 p.12

歴史が伝える教訓は明々白々だ。自由交易は相互の繁栄を生むが、保護主義は貧困を生む。

 

繁栄。

そう、人類は交換と専門化を行うことで繁栄し続けてきた。後退はほとんどなく、前進である。今までも。そしてこれからも。

 

下巻 p.137

悲観主義者の誤りは、とかく自分の知っていることを基準にものを考えてしまう点にある。未来をただ過去を大きくしただけのものと考えてしまうのだ。

 

未来は現在の延長線上ではなく、確実にテクノロジーの進歩等も起こりながら、未来に向かっていくのだ。このことは人類の未来にのみ言えるのでなく、私たち個人についてもいえる。私たちはついつい今の自分の延長線上で未来を考えてしまうが、私たちだって日々何かしらの情報を入れ、変化しているのだ。

 

本書を読むと、今の時代だけでなく、どの時代も「未来は暗い」という悲観主義が蔓延してきたことがわかる。何も今だけが特別じゃない。人類にはまるで、未来を悲観的にみる遺伝子が入っているのか?、と思うぐらい、各時代の人々は悲観的に考えていた。しかし、その人々たちにとって、未来人である今の私たちが現実を暗いと思うことはなく、むしろ今の時代が人類の歴史上、一番いい!!、と思う人が多数であろう。

この事実に気づくだけでも、本書は読む価値のある本である。

 

その時代、時代に溢れていた多くの未来への悲観的見方をまとめ、その主張が現在ではどうなっているか、ということをまとめている。著者の情報の編集能力の高さには圧巻である。

 

私を含め多くの人は、なぜ人々は楽観的ではなく、悲観的な未来を描いてしまうのだろうか?

最悪を想定しておいた方が、実際に最悪な状況になったときにダメージが少ないから?

もともと人類は先のことは悲観的に考えてしまう生き物なのだろうか?

 

私は未来の不安(言い換えれば未来の恐怖)を私たちに与えておけば、権力者たちにとっていい駒として使えるからだろう、と思っている。だから、多くの人に影響を与えることのできるマスメディア使って、「未来は暗い」というネガティブな未来を私たちに植え付けてくる。

未来を不安にさせることで、頑張って働かせ、貯金をさせ、保険に加入させ、家を買わせる。未来の安心を保証する幻想を、私たちに消費させる。

 

しかし、未来が今より悪くなる確率は限りなく低いのだ。それは本書でも示すように歴史が証明をしている。

だから悲観主義ではなく、楽観主義でいこうではないか。

私たちは思ったことを現実にできる素晴らしい力をもっている。悲観的に考えていても、未来は明るく発展してしまったのだから、私たちが楽観的に、希望のある未来を描けたら、どんな素晴らしい未来を創ってしまうのだろうか。考えただけでもワクワクしてしまう。

 

さあ、それぞれ自分の思う明るい、希望のある理想の未来を創造しようではないか。あなたが理想の未来を描いた瞬間、その未来はあなたに向かってくるのだから。