れいじのなかのれいじ

神威怜司のbookメモ&思考メモです。

ゲノム編集に関する研究の現状を学び、思考の種を与えてくれる一冊

 

ゲノム編集に関する研究の現状をまとめた一冊。
ゲノム編集が非常に進んでいること、その可能性の大きさを知っていくのは大変に面白く、一気に読んでしまった。
帯にもあるように応用分野は人間の不老長寿にも及ぶため、読みながらいろいろと考えさせられる面が多かった。

人類の寿命を伸ばすこと。
現在において不治の病と言われている病を治せる病とすること。

こういったことは、一見、聞こえがいいが、果たして本当にいいことなのだろうか?
自分自身、あるいは自分の大切な人で考えた場合は、いいことになるだろう。だって、自分自身(あるいは大切な人)が長生きして、元気にすごせるのだから。
しかし、人類全体、地球全体で考えると、必ずしもいいことではないと思う。今でも生態系のバランスは適切とは言えないのに、それに拍車をかけて、生態系、社会形態のバランスが更に崩れ、その結果、どのようになってしまうのかがまるで想像がつかない。

また「生きる」だけでは恐らく人間は満足できないはずで、「生きる」ことが当然となれば、より上の欲求が出てくる。その欲求を満たせないと、結局は真に「生きている」ことには繋がらなくなるだろう。

ゲノム編集の研究の進展と共に、その他の分野も追いつくように伸びていかないと、複数のひずみが生まれていくだろう。
だが、その「ひずみ」はこれまでにも多くあったはずで、多くのひずみを人類は解消してきて、今まで存在している。
なので、これからも問題はないだろう、と楽観視もできる。

著者はあとがきに、以下のことを記述している。
「従うべき何かを見出す前に(神のごとき)「全能の技術」を手に入れてしまった私たち人類は、これから、どう進むべき道を決めていけばいいのか?今の筆者に、その答えは思い浮かばない。あなたにはわかるだろうか?少なくとも、それを考える手がかりに本書がなり得たと願って、その筆を置きたい。」(p.247抜粋)

私にとっては大変に考えさせられる一冊になった。
多くの読者にとっても、考えさせられる一冊になるのではないだろうか。